経審(経営事項審査制度)

 

1,経営事項審査(経審)とは

国、地方公共団体などが発注する公共事業を直接請け負おうとする場合には、必ず受けておかなくてはならないとされている審査で、公共事業の各発注機関は、競争入札に参加しようとする建設業者についての資格審査を行うこととされており、経審(ケイシン)は建設業許可を受けていることが前提となります。

 

この資格審査にあたっては、欠格要件に該当しないかを審査した上で、「客観的事項」と「発注者別評価」の審査結果を点数化(総合点数)して、格付けが行われています。このうち「客観的事項」にあたる審査が「経営事項審査」です。
この「経営事項審査」は、どの発注機関が行っても同一の結果となるべきものですので、特定の第三者が統一的に一定基準に基づいて審査を行うことが効率的ですし、また、この審査自体が建設業行政ともに密接に関連していることから。建設業法により建設業許可に係る許可行政庁が審査を実施することとされています。

 

建設業許可を取得し、額の大きい工事の受注をしている事業者は、これから公共工事への入札参加を検討されているかたが多いのではないかと思います。
このような場合に、事業者の健全性を示す客観的な評価制度である、経審の認定を受ける必要があります。建設業と経審の関係性は下のイメージ図のようになります。

 

 

2,建設業と経審の関係イメージ

国土交通省関東地方整備局ホームページより

 

 

経審制度の全体像は、上記「建設業者と経営事項審査の関係」のようになります。また1年間のタイムスケジュールは下記の表の通りとなりますのでご覧ください。
仮ですが、3月末が決算日の場合のタイムスケジュールとなります。

 

 

3,経審と入札参加資格申請の流れ(3月末決算の場合)

経審関係の流れ タイムスケジュール 入札参加関連の流れ
1月

入札参加資格
申請期間

 

自社が入札を希望する自治体へ申請
(建設業許可を受けている地域内の都
道府県および市町村)

2月

決算日
3月末が決算の場合

3月
決算書の作成

4月

入札参加資格発生
通常は2年間

決算確定・税務申告

 

5月
決算変更届
経営状況分析申請の準備

新しい通知書を
官公庁に提出

官公庁により、入札参加資格
申請時ではなく、新しい総合
評定値通知書を取得した段階
で随時提出を求めるところが
あります。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

11月~2月ごろ
入札参加資格申請の定期受付開始・申請

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

入札参加資格認定通知書受取り
(4月より2年間有効)

決算変更届
決算から4か月以内に決算変更届を提出
2部作成し、1部は返却後保管する

 

経営状況分析申請
経営分析申請書と直前3期分の建設業法
様式の財務諸表を提出

6月
経営規模評価申請の予約

経営状況分析結果通知書の取得

7月
経営状況分析結果通知書受取り

経営規模等評価申請 8月
総合評定値通知書の取得

9月
総合評定値通知書受取り

総合評価通知書
前年度分有効期限
経審の有効期限は審査基準日から1年7カ月です

10月
11月
12月
1月
2月

決算日
3月末が決算の場合

3月
電子入札の登録

4月
以後この流れを繰り返します

4,入札参加資格申請までのながれ

建設業の場合、
建設工事事業者として公共工事・各省庁管轄工事に入札したいときは、下記1,~5,の手順を踏む必要があります。

1,建設業許可を取得する
    ▼
2,決算変更届を行なう
  決算日から4ヶ月以内
  3期分必要
  毎年行う必要があります
    ▼
3,経営事項審査(経審)を受ける
    ▼
4,入札参加資格申請
  各自治体・各省庁等へ
    ▼
5,入札資格を得た自治体へ入札が可能

 

「4,入札参加申請」各省庁行なう場合についてもう少し細かく解説しますが、①省庁管轄全体に対する場合②特定の機関に対する場合で申請先が異なりますので、公示をよく確認し、誤りがないようにしてください。

 

 

 

5,(表)経審の評価項目

 

 

(表) 経審の評価項目

ウエイト
割合

評点の記号 評価項目 配点 P点換算後

0.25(X1)
 25%

X1

完成工事高
(業種別)

2,309~397 577~99

0.15(X2)
 15%

X2 自己資本額 2,114~361 159~27
平均利益額 2,447~547 184~41
経営状況 1,595~0 319~0

0.20(Y)
 20%

Y X1 純支払利息比率
X2 負債回転期間
X3 総資本売上総利益率
X4 売上高経常利益率
X5 自己資本対固定資産比率
X6 自己資本比率
X7 営業キャッシュフロー
X8 利益剰余金

0.25(Z)
 25%

Z 技術職員数(業種別) 2,335~510 467~102
元請完成工事高(業種別) 2,865~241 143~12

その他の審査項目
社会性等(注)

2,073~▲1,837 272~▲241

0.15(W)
 15%

W W1

建設工事の担い手の育成の
確保に関する取組の状況

450~▲1,200 59~▲158
雇用保険加入の有無 ▲400 ▲53
健康保険加入の有無 ▲400 ▲53
厚生年金保険加入の有無 ▲400 ▲53

建設業退職金共済の
加入の有無

150 20

退職一時金もしくは企業年金
制度導入の有無

150 20

法定外労働災害補償制度
加入の有無

150 20

若年の技術者及び技能労働
者の育成及び確保の状況

20~0 3~0

知識及び技術又は技能の向上
に関する取組の状況

100~0 13~0

ワークライフバランスに
関する取組の状況

50~0 7~0

建設工事に従事する者の就業
履歴を蓄積するために必要な
措置の実施の状況
(建設キャリアアップ制度)

150~0 20~0
W2 建設業の営業継続の状況 600~▲600 79~▲79
営業年数 600 79

民事再生法又は会社更生法の
適用の有無

▲600 ▲79
W3 防災活動への貢献の協力
防災協定締結の有無 200 26
W4 法令遵守の状況 0~▲300 0~▲39
営業低処分の有無 ▲300 ▲39
指示書分の有無 ▲150 ▲20
W5 建設業の経理の状況 300~0 39~0
監査の受審状況 200~0 26~0
公認会計士の数 100~0 13~0
W6 研究開発の状況
研究開発費(2期平均) 250~0 33~0
W7 建設機械の保有状況

建設機械の所有
及びリース台数

150~0 20~0
W8

国又は国際標準化機構が
定めた規格による登録の
 状況

100~0 14~0
ISO 9001の登録の有無 50~0 7~0

➀ISO14001の登録の有無
②エコアクション21の登録の有無
➀②いずれかで加点

➀50~0

 

②30~0

7~0

(注)
Wその他審査項目(社会性等)の各評点は、国土交通大臣通達「経営事項審査の事務取扱について」
国総建第269号(平成30年1月31日)で示された点数をあらかじめ10倍したものを掲載して
います。
(評点算出の計算過程では通達で示された点数を10倍することになっているため)

6,P点(総合評定値)」の算出方法とは

P点は総合評定値のことで、特に重要な最終評点を表したものです。(以下、P点)

 

 

P点(総合評定値)」の算出方法
(P)=(X1)0.25+(X2)0.15+(Y)0.20+(z)0.25+(W)0.15

 

 

  (注)各評点にウエイトを掛けて得た数値(小数点以下も含む)を合計したうえで、
   小数点以下第1位を四捨五入

 

 

7,建設業許可

 

 

 

8,決算変更届

 

 

 

9,入札参加資格申請

 

 

 

10,ランクABCDの目安

建設会社のランク付けとは、公共工事を発注する官公庁などが、建設会社をランク付けしたものです。

 

ランクは、売上、利益、資本力、技術力などで決定されます。

 

官公庁によって区分方法が異なり、たとえば、国土交通省ではA~Dの4段階で区分されています。
一般的には、

【国土交通省A~Dの4段階】
Aランクは7億2,000万円以上
Bランクは7億2,000万円まで
Cランクは3億円まで
Dランクは6,000万円まで

 

の工事が受注できるとされます。
小規模な工事はCやD、大規模な工事の場合はAやBに頼むなど、分かりやすいようにランク付けがあります。