

製造業と建設業の会計で異なる点として挙げられる特徴は➀勘定科目と②収益認識基準の2点です。
建設業会計では独特の勘定科目を使い会計処理を行いますが、科目名が異なるだけで、その意味や使い方は通常の製造業と同じです。
わかりやすく整理すると下記のようになります。
➀製造業と建設業の勘定科目
| 製造業 | 建設業 |
| 売上 | 完成工事高 |
| 売上原価 | 完成工事原価 |
| 仕掛品 | 完成工事支出金 |
| 売掛金 | 完成工事未収入金 |
| 買掛金 | 完成工事未払金 |
| 前受金 | 未成工事受入金 |
| 製造原価 | 完成工事原価 |
| 製造間接費 | 工事間接費 |
➀ー1借方と貸方
資産=赤字、負債=緑色、費用=橙色
| 仕訳の内容 | 借方 | 貸方 | |
| 1 | 現金過不足の処理 | 雑損 | 現金過不足 |
| 現金過不足 | 雑益 | ||
| 2 | 当座借越の振替 | 当座預金 | 当座借越 |
| 3 | 貸倒引当金の設定 | 貸倒引当金繰入 | 貸倒引当金 |
| 4 | 固定資産の減価償却 | 減価償却費 | 減価償却累計額 |
| 5 | 貯蔵品の振替 | 貯蔵品 | 通信費、租税公課 |
| 6 | 費用の前払い | 前払費用 | 〇〇費 |
| 7 | 売上原価の算定 | 繰越商品 | 仕入 |
| 仕入 | 繰越商品 | ||
| 8 | 消費税の処理 | 仮受消費税 | 仮払消費税 |
| 未払消費税 | |||
| 9 | 法人税等の処理 | 法人税等 | 仮払法人税等 |
| 未払法人税等 |
【ポイント】
➀出金が当期の費用にあたるかどうか
次期にあたる費用は意図的に利益を減らすことになります。
この場合、表中6費用の前払いしていることになりますから
前払費用を借方に計上し、
貸方に〇〇費を計上することになります。
➁日常の簿記の流れ
| 取引 | |
| ▼ 取引が発生したら仕訳 | |
|
仕訳 |
|
| ▼ 仕訳をしたら勘定に転記 | |
|
勘定 |
|
|
▼ 日常の取引ではここまで作成 |
|
|
試算表 決算時に勘定を集計し |
【試算表の種類】 |
| ▼ | |
|
➀貸借対照表 資産・負債・資本(純資産)を |
|
| ➁損益計算書 費用と収益を抜き出して作成 |
③帳簿の締切り
【収益・費用勘定の締切方法の解法手順】
1.収益・費用勘定の残高を損益勘定に振り替える。
2.損益勘定の残高を久理子に利益余剰金(利益の貯金箱)に振り替える。
【資産・負債・純資産の締切方法の解法手順】
(英米式決算法)
1.資産、負債、純資産の残高を、貸借の逆側 に記入し、金額の前に次期繰越と記入する。
そして、借方・貸方とも合計を出して締め切る。
(仕訳をしないで締め切りを行うのが英米式決算法の特徴)
2.次期繰越と記入した逆の側に前期繰越と記入し、残高を書く。
③収益の認識基準
工事契約に関して、工事の進行途上においても、その進捗部分について成果の確実性が認められる場合には工事進行基準を適応し、成果の確実性が認められない場合には工事完成基準を適応します。
| 三要件 ▶ | 信頼性の見積 ▶ | 成果の確実性 ▶ | 収益の認識基準 |
|---|---|---|---|
|
➀工事原価総額 |
各要素について |
成果の確実性が |
工事進行基準 |
|
各要素について |
成果の確実性が |
工事完成基準 |
収益認識基準には下記の三種類があります。
| 収益認識基準の種類 | 説明 |
|---|---|
| 工事進行基準 |
工事の進捗に従って収益を計上するという 工事契約に関して、工事収益総額、工事原価総額及び |
| 工事完成基準 |
工事が完成し、引き渡したときに収益を計上する 工事完成基準とは、工事契約に関して、工事が完成し、目的 |
| 部分完成基準 |
請負工事の全部が完成しなくても部分的に引渡しが行われたときに |
簿記の目的は、株主に公開する正しい資料を作ることです。
日々行う仕訳が集まるところが、
➀損益計算書(P/L)
➁貸借対照表(B/S)
③株主資本等変動計算書(S/S)
の3つになります。
➀損益計算書(P/L)はProfit and Lossstatemennt(プロフィット アンド ロスステートメント)と呼ばれ、
ある期間の経営成績を表します。勘定式と報告式があり、法人の決算書では報告式が採用されています。
勘定式が結論が分かるだけなのに対し、報告式ではこういった理由で利益が増えた、減ったということが
分かるようになります。
【損益計算書 P/L】
| 損益計算書(P/L) | |||||||
| 令和8年3月31日 | |||||||
| (株)〇〇建設 | (単位:千円) | ||||||
| Ⅰ | 売 上 高 | ➁営 業 利 益 | ××××× | ||||
| Ⅱ | 売 上 原 価 | ××××× | Ⅳ | 営 業 外 収 益 | ××××× | ||
| 1.機首商品棚卸高 | 1.受 取 配 当 金 | ××××× | |||||
| 2.当期商品仕入高 | ××××× | 2.受 取 利 息 | ××××× | ||||
| 合 計 | Ⅴ | 営 業 外 費 用 | ××××× | ||||
| 3.期末商品棚卸高 | ××××× | 1.支 払 利 息 | |||||
| ➀売 上 総 利 益 | ③経 常 利 益 | ||||||
| Ⅲ | 販売費及び一般管理費 | ××××× | Ⅵ | 特 別 利 益 | ××××× | ||
| 1.減 価 償 却 費 | ××××× | 1.固 定 資 産 売 却 益 | |||||
| 2.給 料 | Ⅶ | 特 別 損 失 | ××××× | ||||
| 3.貸倒引当金繰入 | 1.固 定 資 産 売 却 損 | ||||||
| ➁営 業 利 益 | ④税引前当期純利益 | ||||||
| 法 人 税 等 | ××××× | ||||||
| ⑤当 期 純 利 益 | ××××× | ||||||
➀~⑤各利益のイメージ図
|
■■■ プラス要素 |
|||||||||
| 売上高 | |||||||||
| 売上原価 | |||||||||
| ➀売上総利益 | |||||||||
| 販管費 | |||||||||
| ➁営業利益 | |||||||||
| 営業外収益 | |||||||||
| 営業外費用 | |||||||||
| ③経常利益 | |||||||||
| 特別利益 | |||||||||
| 特別損失 | |||||||||
| ④税引前当期純利益 | |||||||||
| 法人税等 | |||||||||
| ⑤当期純利益 | |||||||||
上記の損益計算書(P/L)表には➀~⑤の〇〇利益があります。
➀売上総利益
➁営業利益
③経常利益
④税引前当期純利益
⑤当期純利益
の5つです。
こちらの額を求める計算式は次の通りになり、➀~⑤各利益のイメージ図と
組み合わせてご覧になるとお分かりになり易いと思います。
➀売上総利益(粗 利)=
売上高-売上原価
➁営業利益=
➀売上総利益-販管費及び一般管理費
▼
販管費及び一般管理費には
給料、租税公課、減価償却費、貸倒引当金繰入、支払い家賃等
多くの費用勘定がこちらに該当します。
③経常利益=
➁営業利益+営業外収益-営業外費用
▼
営業外収益には
受取利息、結家証券売却益、受取配当金等が該当し、
営業外費用には
支払利息、有価証券売却損等が該当し、本業とは関係なければ貸倒引当金繰入、貸倒損失などのものが該当します。
④税引前当期純利益=
③経常利益+特別利益-特別損失
⑤当期純利益=
④税引前当期純利益-法人税等
【貸借対照表のイメージ】
| 資産 | 負債 |
| 費用 | 純資産 |
【貸借対照表 B/S】
| 貸借対照表(B/S) | |||||||
| 令和8年3月31日 | |||||||
| (株)〇〇建設 | (単位:千円) | ||||||
| 資産の部 | 負債の部 | ||||||
| Ⅰ | 流 動 資 産 | Ⅰ | 流 動 負 債 | ××××× | |||
| 現 金 預 金 | ××××× | 支 払 手 形 | ××××× | ||||
| 受 取 手 形 | ××××× | 工 事 未 払 金(買掛金) | ××××× | ||||
| 貸 倒 引 当 金 | ××××× | ××××× | 前 受 収 益 | ××××× | |||
| 完成工事未収入金(売掛金) | ××××× | ・・・・・ | ××××× | ||||
| 貸 倒 引 当 金 | ××××× | ××××× | |||||
| 未成工事支出金 | ××××× | 流 動 負 債 合 計 | ××××× | ||||
| 材 料 | ××××× | Ⅱ | 固 定 負 債 | ||||
| 前 払 費 用 | ××××× | 長 期 借 入 金 | ××××× | ||||
| ××××× | |||||||
| ××××× | 固 定 負 債 合 計 | ××××× | |||||
| 流 動 資 産 合 計 | ××××× | 負 債 合 計 | ××××× | ||||
| Ⅱ | 固 定 資 産 | 純 資 産 の 部 | |||||
| 1. | 有形固定資産 | Ⅰ | 株 主 資 本 | ||||
| 建 物 | ××××× | 資 本 金 | ××××× | ||||
| 減価償却累計額 | ××××× | ××××× | 資 本 余 剰 金 | ||||
| 備 品 | ××××× | 資 本 準 備 金 | ××××× | ||||
| 減価償却累計額 | ××××× | ××××× | その他資本剰余金 | ××××× | ××××× | ||
| 2. | 無形固定資産 | 利 益 剰 余 金 | |||||
| の れ ん | ××××× | 利 益 準 備 金 | ××××× | ||||
| 3. | 投資その他の資産 | その他利益剰余金 | |||||
| 長 期 貸 付 金 | ××××× | 任 意 積 立 金 | ××××× | ||||
| ・・・・・ | ××××× |
繰 越 利 益 剰 余 金 |
××××× | ××××× | |||
| 固定資産合計 | ××××× | 4. | 自 己 株 式 | ××××× | |||
| Ⅲ | 繰 越 資 産 | Ⅱ | 評価・換算差額等 | ||||
| 社 債 発 行 費 | ××××× | その他有価証券評価差額金 | ××××× | ||||
| 繰 越 資 産 合 計 | ××××× | 繰越ヘッジ損益 | ××××× | ||||
| Ⅲ | 新 株 予 約 権 | ××××× | |||||
| 純 資 産 合 計 | ××××× | ||||||
| 資産合計 | ××××× | 負債および純資産合計 | ××××× | ||||
|
資産合計と負債および純資産合計の額は必ず一致します。 |
|||||||
財務諸表/損益計算書・完成工事原価報告書(法人用)Excel書式
上記の表が一般的な貸借対照表になります。
ここから表中Ⅰ流動資産から主要な各勘定科目について特徴と性質を見ていきます。
まず、
割引現在価値
貨幣の現在価値とは
貨幣すなわちお金は、時間の経過に伴って将来の価値が変動することを言います。
↓
具体的には、現在の10,000円と1年後の10,000円は同じ価値ではない
ということです。
↓
なぜそのようなことが起きるかというと、世の中には利息というものが存在するからです。
↓
上記の例で年利率が10%とすると現在の
10,000円は1年後には
10,000円×110%=110,000円となります。
つまり、具体的には、現在の10,000円と1年後の10,000円は同じ価値ではないと
いうことです。
反対に年利率が-10%とすると現在の
10,000円は1年後には
10,000円÷110%=9,091円
(1.1)
となりますので、
年利率-10%を割り算より計算し易い掛け算
で算出するには0.9091を10,000円に掛ければ良い訳です。
この少数に直した値のことを複利現価係数と呼びます。
例:年利率-10%の場合
1年目の複利現価係数 0.9091(少数第五位四捨五入)
2年目の複利現価係数 0.8264
3年目の複利現価係数 0.7513
4年目の複利現価係数 0.6830
5年目の複利現価係数 0.6209
この場合、
4年目の複利現価係数は
0.6830
5年目の複利現価係数は
0.6209
となります。
年金現価係数とは
先程の複利現価係数を足し合わせた値のことを年金現価係数と言います。
↓
メリットは毎年、同じ金額の現金価値の合計を計算する際に、年金現価
係数を用いると計算し易くなります。
例:年利率-10%の場合
1年目の複利現価係数 0.9091(少数第五位四捨五入)
2年目の複利現価係数 0.8264
3年目の複利現価係数 0.7513
4年目の複利現価係数 0.6830
5年目の複利現価係数 0.6209
1~5年目の合計 3.7907
この場合、
4年目の複利現価係数は
3.1698
5年目の複利現価係数は
3.7907
となります。
複利現価係数表と年金現価係数表
| 複利現価係数 | 年金現価係数 | |||
| 7% | 8% | 7% | 8% | |
| 1年 | 0.9436 | 0.9259 | 0.9436 | 0.9259 |
| 2年 | 0.8734 | 0.8573 | 1.8080 | 1.7833 |
| 3年 | 0.8163 | 0.7938 | 2.6243 | 2.5771 |
| 4年 | 0.7629 | 0.7350 | 3.3872 | 3.3121 |
| 5年 | 0.7130 | 0.6806 | 4.1002 | 3.9927 |
企業活動の状況を表す計算書類のことを財務諸表といいます。
財務諸表
損益計算書
貸借対照表
キャッシュ・フロー計算書
株主資本等変動計算書
個別注記表
工事完成原価報告書
|
損益計算書 |
企業の経営成績を表す財務諸表 |
|
貸借対照表 |
企業の財政状態を表す財務諸表 |
|
キャッシュ・フロー 計算書 |
直接法と間接法がある |
|
株主資本等 変動計算書 |
貸借対照表の純資産の部の一会計期間 |
|
個別注記表 |
会社計算規則により、重要な会計方針に係る |
建設業は、完成品の価格が高いことや着工から完成までの期間が長いため建設業会計は製造業会計とは異なる部分が多くあります。
会計公準
企業が会計を行ううえで基礎的前提および仮定であり、会計上の理論や原則が成立するための基本的な前提条件となっていることを「会計公準」と言います。
➀企業実態の公準
企業は、その出資者から分離した別個の存在であり、それを会計単位とする前提のこと。
②継続企業の公準
(会計期間の公準)
ア、減価償却計算
「企業は永続する」という仮定により、耐用年数を設け、その期間に費用を配分することになります。
イ、繰延資産の計上
「企業は永続する」という仮定により、将来の収益獲得に貢献するものとして、繰越資産の計上が認められている。
ウ、引当金の設定
「企業は永続する」という仮定により、将来の支出に備えた引当金の計上を行うことになります。
③貨幣的評価の公準
(貨幣的測定の公準)
企業はその経済活動を貨幣類によって記録・計算・表示するとする前提のこと。日本の場合は、円を貨幣単位とし統一して、記録・計算・表示しなければならないとする前提条件のこと。
現金についての重要論点
|
現金の範囲 |
➀郵便為替証書 ※直ぐに現金化できるもの |
|
現金過不足の場合 |
決算時の処理方法 |
現金に含めてはならないもの
|
現金勘定に含めてはならないもの➀~➁を ➀先日付小切手 ➁借受メモ・借用証書 |
決算時に正しい勘定科目へ |
・定期預金の利子と表示
【利子】
当座預金と違って定期預金には利子が付き、利払日に定期的に後払いされます。
▼
よって、決算整理において決算日前の利払日から決算日までの期間にかかる利子を未収計上(見越計上)する必要があります。
▼
収益の未収計上と言います。
〈表示のルール〉
貸借対照表日の翌日から1年以内に満期日を迎える定期預金は、流動資産に計上します。
しかし、1年超のものについては固定資産の投資その他の資産に長期性預金勘定(あるいは長期定期預金勘定)を用いて表示しなければなりません。
【具体例】
➀定期預金100万円 令和4年3月1日預入
➁満期日 令和7年2月28日
③年利率 4.5%で半年払い
④決算日 令和4年3月31日
➀~④の場合で、当該定期預金は流動資産(現金預金勘定)として記帳。未収利息は月割計算。
以上の資料に基づき、決算整理仕訳を行うケース。
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